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脂肪

脂肪(しぼう、食事脂肪)は、動植物に含まれる栄養素の一つ。日本の栄養学では一般に脂質(ししつ)と呼ぶ。また脂肪、脂質、(あぶら)といった用語は、各々うまく定義されずに使われていることがある。この記事では栄養の観点で解説する。

脂質は、炭水化物たんぱく質と共に「三大栄養素」と総称され、多くの生物の栄養素である。この三大栄養素の比率をそれぞれの頭文字をとってPFCバランスという時、英語圏に倣って脂肪(Fat)を用いている。食品中の脂肪と言う時、脂質やその詳細である脂肪酸を指す。常温液体の油脂はを指し、一方で脂肪と呼ぶとき固体のこともある。食品中の脂肪と言う時には、脂質を指し液体と固体の両方を含みうる。自らの体を指して脂肪と言う時、脂肪酸のグリセリンエステルの中性脂肪であることが一般的である。

脂質は、単位重量あたりの熱量が9kcal/gと他の三大栄養素の2倍以上あり、生体は食物から摂取した脂肪をエネルギーの貯蔵法としても利用している。脂質のうち多価不飽和脂肪酸に分類されるω-6脂肪酸リノール酸ω-3脂肪酸αリノレン酸必須脂肪酸である。

食事調査は、牛や豚、牛乳など動物性食品に多い飽和脂肪酸の摂取が心疾患など病気との関連を見出しており、脂肪の細かい区別を周知させることは難しいと考えた栄養学者たちが、「脂肪は良くない」という単純なメッセージを作ったが、実際には一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取量が多くてもそうしたリスクを下げる傾向がみられている[1]。こうした科学的検証の蓄積により2015年のアメリカの食生活指針は脂肪を30%に控えるという指針を撤廃した[2]

発見

20世紀初頭までに、タンパク質と炭水化物は必要な食品成分だと知られていたが、脂肪酸は炭水化物から合成できるので優れたエネルギー源ではあるが、必要不可欠ではないと考えられていた[3]。20世紀初頭の技術では食物から脂肪を完全に抽出できず、脂肪を除去してラットに与える実験では、実際には脂肪が残留していた[3]。1912年にトマス・バー・オズボーン英語版ラファイエット・メンデル英語版はそうした技術によってラットでの脂肪は不要だと確認し、1920年代までに必要不可欠ではないので必要最小限は非常に少なくすべきとの見解を示し、同時代の研究者は多くはこの見解に従った[3]。オズボーンは全米科学アカデミーのメンバーで食物タンパク質で国際的に著名なアメリカの生化学者であり、メンデルはアメリカ栄養研究所の初代所長など、両者は国際的にも権威的に他にも数々の地位を占めていたためである[3]

1929年には、ミネソタ大学のジョージ・オズワルド・バー(George Oswald Burr)が ω-6系の多価不飽和脂肪酸であるリノール酸のラットでの欠乏症を確認し、必須栄養素だと報告された[3]。この見解は栄養研究所の見解と対立したので疑義されたが、数年を経て追試が行われ受け入れられていった[3]。また1931年にジョージ・オズワルド・バーは、ω-3系のαリノレン酸がラットで合成されなかったことを報告し、これも必須脂肪酸だと結論した[3]。しかし、欠乏症実験にてリノール酸と競合する結果が確認されるため、長い間αリノレン酸でも確実だとみなされなかった[3]

1960年までにはカルフォルニア大学ロサンゼルス校のジム・ミードが、リノール酸がアラキドン酸に変換されることを確認した[3]。1964年にはカロリンスカ研究所で、アラキドン酸がプロスタグランジンに変換されたことが確認された[3]

1960年代のアメリカでの食事調査は、飽和脂肪酸の摂取が血中コレステロールの濃度を上昇させ、植物油と魚油が低下させることを明らかにし、その後の食事指導は総脂肪量を減らすのではなく、飽和脂肪酸の代わりに不飽和脂肪酸を摂取することが重要だとし、不飽和脂肪酸の摂取量が増加した結果1970-1980年代にはアメリカ人の虚血性心疾患の発生率を低下させた[1]

だが、脂肪の細かい区別を周知させることは難しいのではと考えた栄養学者たちは、脂肪がよくないという単純なメッセージを生み出した[1]。アメリカ農務省の意図とは、アメリカにて低脂肪食にすることで必然的に飽和脂肪酸の摂取量を減らすということであった[1]

1976年には、Cuthbertonが粉ミルクの必要成分としてリノール酸のみが必須だと主張したが、Crawfordは異議を唱え、1978年には世界保健機関(WHO)と国際連合食糧農業機関(FAO)が、脂肪に関する専門部会でαリノレン酸の必須性を確定した[4]。1982年に、ラルフ・ホルマンが、αリノレン酸の摂取が増加すると、血中のDHAが増加することを確認しヒトでαリノレン酸が必須だと裏付けた[3]

1994年の世界保健機関による、「人間栄養学における脂肪と油」(Fats and oils in human nutrition)では、トランス脂肪酸による飽和脂肪酸に似た影響が報告された[5]。2003年にはトランス脂肪酸を1%未満にすべきとした[6]

脂肪酸の比率よりも、飽和脂肪酸の摂取量の方が重要という科学的な検証によって、2015年のアメリカの食生活指針は、以前に示した脂肪を30%に控えるという指針を撤廃した[2]

生体での利用

脂肪のカロリーは9kcal/gであり、炭水化物タンパク質の4kcal/gよりも単位重量あたりの熱量が大きく、哺乳類をはじめとして動物の栄養の摂取や貯蔵方法として多く利用されている。

食物から摂取したり、体内で炭水化物から合成された脂肪は肝臓脂肪組織に貯蔵される。脂肪からエネルギーを得るときには、モノグリセリド(かつてはグリセリンとされていた)と脂肪酸に加水分解してから、脂肪酸をβ酸化代謝によりさらにアセチルCoAに分解する。

安静時や強度の低い運動時には脂肪の方がよりも多く使われている。血糖グリコーゲンは利用しやすいが貯蔵量は多くはないので安静時などではあまり多くは使われず、強度の高い運動時などに糖が優先的に使われるようになる[7]

エネルギーの貯蔵と生存

成人では基礎代謝量は1日およそ1600キロカロリーであるが、栄養摂取量が減少すると1200キロカロリーに落ち、延命を図ろうとする生理的反応が起こる。栄養が欠乏するとまず脂肪が分解され、その後に使用していない筋肉がエネルギー源として利用される。

これにより、水分の補給があれば絶食状態で1-2か月程度生存でき、この限界を越えれば餓死に至る。ただし、肥満の人(脂肪の貯蓄の多い人)はこれより長く生存できる。痩せた人(脂肪の貯蓄の少ない人)はこれより短めで死に至ると考えられる。餓死は体内の脂肪を使い切った後に起こるものであり、(水分の補給があれば)肥満状態の人間が餓死することはない。肥満の場合、まずは脂肪を使い切る期間を経た上で餓死に向かう。脂肪量によっては3-4か月以上かかることもある。水だけで3か月以上生存するというのは信じ難いかも知れないが、同じ哺乳類である熊などは脂肪を蓄えた状態で冬眠して数か月すごすので決して無理な数字ではない。

仮に、体重70kg、体脂肪率20%とし、脂肪のカロリーを9kcal/g、低下した基礎代謝を1200kcal/日とすると、70 kg x 0.2(体脂肪率)x 9 kcal/g / 1200 kcal/日 = 105日、となり3か月半ほど生存することができる。ただしあくまで生存が可能であるというだけで、健康な状態を維持することは不可能に近い。

PFCバランス

タンパク質・脂肪・炭水化物のカロリーベースでの摂取バランスのことを、それぞれの頭文字をとってPFCバランスという。この中で、脂肪の比率を25-30%以下に抑えることが、生活習慣病を予防するための食生活指針の考えの一つとなっている。しかし#歴史の通りこの考え方は疑問視され、2015年にはアメリカの食生活指針は脂質の上限を撤廃した。

心血管系のリスクを上げる飽和脂肪酸の摂取が多い食事状況であれば、脂質全体の摂取量を減らすことでそのリスクを回避するという目的は達成されるが、しかし飽和脂肪酸を心血管系のリスクを下げる種類の脂肪酸に置き換えても目的は達成され、脂質全体の摂取比率が上がっている[1]

1994年の世界保健機関による「人間栄養学における脂肪と油」(Fats and oils in human nutrition)は、成人の脂質の摂取量は15%以上とし、下回る集団においては確保の努力が必要だとされた[8]

厚生労働省の1999年の栄養所要量の6次改定では、脂質はエネルギー比率で成人で20-25%の範囲が望ましい。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の望ましい摂取割合は、おおむね3:4:3であり、ω-6脂肪酸ω-3脂肪酸の比は、健康人では4:1程度である[9]

一日のエネルギー必要量を仮に、男性では2660(kcal)、女性では1995(kcal)とすると、脂肪のエネルギー量は9 kcal/gであり、仮に20%の値を当てはめると、以下のとおりとなる。

  • 男性では、2660 kcal/日 x 0.2 / 9 kcal/g =60 g/日(植物油大匙4杯/日に相当)
  • 女性では、1995 kcal/日 x 0.2 / 9 kcal/g =45 g/日(植物油大匙3杯/日に相当)

脂質の摂取基準

栄養摂取目標の範囲(世界保健機関、2003年[6]
食物要素 目標(総エネルギー%)
総脂肪 15-30%
飽和脂肪酸 10%未満
多価不飽和脂肪酸(多価不飽和) 6-10%
ω-6脂肪酸(多価不飽和) 5-8%
ω-3脂肪酸(多価不飽和) 1-2%
トランス脂肪酸 1%未満
一価不飽和脂肪酸 差分

脂質のうち、ω-6脂肪酸とω-3脂肪酸が必須脂肪である。

ω-6とω-3系のバランスについては必須脂肪酸#バランス

健康への影響

飽和脂肪酸は、肉や乳製品に多く有害なLDLコレステロールを増加させ、保護的なHDLコレステロールも増加させる、水素添加された油であるトランス脂肪酸は有害なLDLの増加と保護的なHDLの低下であり、一方で植物油、ナッツ、全粒粉、魚に豊富な一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、特にそのうちのω-3脂肪酸は有害なLDLを減少させ、保護的なHDLを増加させ、またインスリン抵抗性を改善し、心臓のリズムを安定させる[10]。トランス脂肪酸と飽和脂肪酸が少なく、それを不飽和脂肪酸に変えることで心臓病や糖尿病のリスクが減少する[10]

脂肪の摂取量が多い場合に、虚血性心疾患が生じるリスクが高まるという関係が見られるのは飽和脂肪酸のみであり、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の割合を多く摂取する集団ではそのリスクは低い[1]。そのため、ギリシャのクレタ島では脂肪の摂取カロリーが40%と多いが心臓病の発生率は日本の伝統食のように低い[1]。ギリシャの食事については地中海食を参照。ナッツ類の脂肪は主に不飽和脂肪であり、血中のコレステロールの比率を改善させ、ナッツを食べている人では肥満は少ない[1]

トランス脂肪酸は、水素添加された植物油のマーガリンショートニングなどに含まれ、世界保健機関の摂取目標は飽和脂肪酸の10%未満に対して、トランス脂肪酸では1%未満とされるなど、少量で悪影響がある。

乳がんの発生には動物性脂肪だけでなく動物性のたんぱく質が関与していると見られている。アルコールの影響など要因は多様である。また女性ホルモンエストロゲン)が関与し、高脂肪食、肥満も関与する。これは特に閉経後の女性で、脂肪組織でエストロゲンが作られるからである。


脂質と心血管疾患の発症リスク
(WHO/FAO、2003年[11]
リスク低下 関連なし リスク増加
確実 リノール酸
魚や魚油(DHAEPA)
ミリスチン酸
パルミチン酸
トランス脂肪酸
可能性が高い α-リノレン酸
オレイン酸
フィトステロール
ステアリン酸 食事からのコレステロール
可能性がある ラウリン酸の豊富な油

化学

化学では常温で固体油脂をいう。純粋な脂肪は無味無臭無色であるが、天然のものは不純物が溶けているために色が付いている。脂肪と水酸化カリウム水酸化ナトリウムとを反応させると加水分解により高級脂肪酸塩(石鹸)が得られる。この反応をケン化(鹸化)という。脂肪族化合物とは、有機化合物のうち炭素原子の環状配列をもたないものをいう。脂肪中に含まれるので名づけられた。鎖式化合物ともいう。

食品中の脂質

調理に使う油脂類における各脂肪酸の比率。

動物性脂肪は飽和脂肪酸を多く含む傾向があり、乳脂肪がより多い。摂取量を減らすよう取り組まれてきた。魚類の脂肪には多量の不飽和脂肪酸を含むものが多い。

植物油は不飽和脂肪酸を多く含む油が多く融点が低い傾向がある。このため、菜種油のように常温で液体なものが多い。ただし、ヤシ油(ココナッツ油)やカカオバターのように飽和脂肪酸を大量に含む油もある。

脂肪:主な脂肪酸

飽和脂肪酸
(「*」印は揮発性

不飽和脂肪酸


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